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前方の林間から出てきたのは、まるでウマのようなムース(ヘラジカ)だ。 メスでツノがないからウマと間違えるのも無理はない。
その後ろから立派なツノのあるオスのムースも出てきた。 カメラの放列だ。
つがいのムースは悠然と車道を横切って、反対側の林間に姿を消した。 間近にムースを見た興奮で、バスのなかはざわめく。

やがてがらりと展望が開けて、草原の向こうに向銀に輝くマッキンリーが、女王然とした姿を現す。 この山をとり囲むデナリ国立公園は野生動物の宝庫で、180種もいるといわれる。
しかも野生動物の餌づけは一切しないで、自然のまま保護されている。 だから弱肉強食の世界そのものである。

その証拠に、オオカミの群れがグリズリ・ベア(ハイイログマ)の子を襲って食べるシーンを見てしまった。 はるかかなたの山の中腹だったが、双眼鏡で見ていると、親子連れのグリズリ・ベアの親のほうに、オオカミの数頭のチームがちょっかいをかけ、うまい具合に親子を引き離した瞬間、別のオオカミのチームがグリズリ・ベアの子どもに襲いかかった。
マウンテン・シープが断崖絶壁によじ登っているのは、天敵を近づけないためだろう。 アィルソン・ビジター・センターでバスを降り、昼食休みとなる。
あたりの草原のあちこちで、穴から出てきた北極地リスが愛敬を振りまいている。 土のなかに巣を作って生活しているリスだ。

そのとき、100メートルほど前方で、草を食べている2頭のカリブー(トナカイの1種)を発見。 這うようにしてひそかに10メートルほどまで近づいたが、逃げようともせず、夢中で草を食べている。
風下から近づいたので、気づかなかったのだろうか。 絶好のシャッターチャンスだ。
2頭とも立派なツノを持つオスだ。 シャッターを切った途端、一目散に逃げてしまった。
ビジター・センターからさらに奥のワンダー・レイクまで行くバスもあるが、私たちはここから引き返し、帰る途中でキツネ、ヤマアラシ、ハゲタカなども見ることができた。 グリズリ・ベアを近くで見られなかったのは残念だったが、約4時間にわたる楽しい、大満足のワイルド・サファリ・ツアーであった。

グリズリ・ベアでは忘れられない恐怖の体験がある。 それは1983年8月のこと。
私は1人で動物の写真を撮るために、早朝と午後の二回シャトル・バスに乗ったが、運悪くグリズリ・ベアの写真だけ撮ることができなかった。

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